終わりと始まり

                   ヴィスワヴァ・シンボルスカ (沼野充義 訳)

戦争が終わるたびに
誰かが後片付けをしなければならない
物事がひとりでに
片付いてくれるわけではないのだから


誰かががれきを道端に
押しやらなければならない
死体をいっぱい積んだ
荷車が通れるように
誰かがはまり込んで苦労しなければ
泥と灰の中に
長椅子のスプリングに
ガラスのかけらに
血まみれのぼろ布の中に


誰かが梁を運んでこなければならない
壁を支えるために
誰かが窓にガラスをはめ
ドアを戸口に据え付けなければ


それは写真うつりのいいものではないし
何年もの歳月が必要だ
カメラはすべてもう
別の戦争に出払っている


橋を作り直し
駅を新たに建てなければ
袖はまくりあげられて
ずたずたになるだろう


誰かがほうきを持ったまま
いまだに昔のことを思い出す
誰かがもぎ取られなかった首を振り
うなずきながら聞いている
しかし、すぐそばではもう
退屈した人たちが
そわそわしはじめるだろう


誰かがときにはさらに
木の根元から
錆びついた論拠を掘り出し
ごみの山に運んでいくだろう


それがどういうことだったのか
知っていた人たちは
少ししか知らない人たちに
場所を譲らなければならない そして
少しよりももっと少ししか知らない人たちに
最後にはほとんど何も知らない人たちに


原因と結果を
覆って茂る草むらに
誰かが寝そべって
穂を噛みながら
雲に見とれなければならない
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by dimanamana | 2013-11-22 13:29 | 世の中。 | Comments(0)  

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